プロセスの自動化、熱のカスケード利用など従来型の省エネ手法はすでに相当のレベルにあり、より一層の効率化には全く新しい原理によるプロセスの開発が必要である。本研究の意義は、固体触媒と、耐性に富む無機膜を組み合わせた革新的膜反応システムを創成することにより、エネルギー・化学産業における動脈プロセスのグリーン化に貢献することにある。 例えばカルボン酸とアルコールのエステル化のような平衡反応は、現在過剰のアルコール添加、反応蒸留による生成物の除去などの方法を用いて平衡をシフトさせている。しかし過剰のアルコール添加は反応後の分離コスト増大の原因となり、また反応蒸留は、酢酸エチル合成系のように反応物と生成物の比揮発度が小さい場合は効率的でない。仮に膜分離により副生する水のみを反応系内から除去することができれば、大幅なエネルギー削減が期待できる。しかしこれまで検討されてきた有機高分子膜や、A型ゼオライト膜では耐熱性・耐有機酸性が十分でないため、本研究では耐熱性・耐酸性に優れる脱水膜の開発を行った。 本年度は、これまでに開発した脱水能を有する各種ゼオライト膜を用いて膜反応器を構築し、酢酸エチル合成など、工業的に重要性の高い固体触媒反応に適用した。その結果、開発したゼオライト膜の中でも特にモルデナイト型ゼオライト膜は、既往の分離膜では適用できない高温高圧の過酷なエステル合成条件下でも高い結晶性を保ち、優れた脱水能を発揮することが分かった。更に、膜の透過分離性能と反応成績(到達転化率、反応速度、および反応選択性)との関係を検討し、新規な反応分離場における触媒特性および膜透過分離特性など、膜反応器を設計していくために必要な知見を得た。例えば、ゼオライト膜中の交換カチオン種が触媒層に移動し、膜反応器の物性が変化するなど、今後改善すべき新たな課題を見出すことができた。
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