研究概要 |
本研究は,血流を積極的に導入する再構築形肝組織の構築を目指し,in vitro,in vivoにおける組織形成プロセスを相互に最適化することを通じて,その実現可能性を示すことを最終目的とする。平成19年度は以下の検討を行い,それぞれ成果を得た. 1.肝前駆細胞の三次元培養系の最適化細胞ソースとして胎生17日のラット胎児肝細胞を用い,体積0.1cm3のポリ乳酸製の多孔質ディスク状三次元担体を用いた振とう三次元培養において,FGF-1,FGF-4,HGFに加えてsodium btylateを添加した培養系にて,単位細胞辺りで成熟ラット肝細胞とほぼ同レベルまでの機能的成熟化を達成することができた(Tissue Engineering誌査読中).三次元担体内では,担体内表面に非実質細胞がまずライニングし,その上に実質細胞が多層で増殖するという生体内と類似する興味深い最終組織像が得られたが,増殖比は3倍程度で一層の向上が必要であると考えられた.この点については,確立した条件において,平成20年度でより若い胎生日数の細胞を使用した検討を行う. 2.移植デバイスの構築と移植部位の決定まず移植部位については,門脈,下大静脈問および頚動脈間について,まずは手術の実現可能性から検討を実施し,まずはその容易さから2本のうち1本の頚動脈間へのデバイス移植を行うこととした.ここに移植可能なデバイスとしては,テフロンチューブと三次元担体を組み合わせ,全体を蜜蝋にて被覆したものとした.移植直前にヘパリン化を行うことで,当面の抗血栓性の確保を行った.本年度においては,細胞なしのデバイスを用いて,術式の習熟を行い,手術による動物の死亡を20%以下にまで留めることができた.
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