研究課題/領域番号 |
19360375
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
水本 博 九州大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (90346817)
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研究分担者 |
梶原 稔尚 九州大学, 大学院・工学研究院, 教授 (10194747)
井嶋 博之 九州大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (10274515)
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キーワード | ハイブリッド型人工肝臓 / 胚性幹細胞 / 肝細胞 / 分化誘導 / 再生医療 / オルガノイド |
研究概要 |
1.ホリウレタン発泡体(PUF)孔内においてES細胞がスフェロイドを形成するPUF/スフェロイド培養法を利用したPUF型人工肝臓装置を開発し、人工肝臓装置内でのマウスES細胞から肝細胞への分化誘導を行った。その結果、培養2週間目以降よりアンモニア除去能やアルブミン分泌能などの肝特異的機能の発現が認められ、部分的にではあるが、人工肝臓装置内においてES細胞から肝細胞へと分化が起こっていることが確認された。次に、人工肝臓装置としての性能を評価するために、本装置を70%部分肝切除を行ったラットに適用した。その結果、対照群では経時的な増加が示された血中アンモニア濃度について、その増加を抑制する効果が示された。また症例は少ないながら、術後の生存率について対照群と比較して改善する傾向が示された。以上の結果、本培養技術によってES細胞の分化誘導を行った人工肝臓装置が肝不全状態からの回復に有効な治療法になり得ることを示した。 2.中空糸内部においてES細胞がオルガノイドを形成する中空糸/オルガノイド培養法を利用した人工肝臓装置を開発し、人工肝臓装置内でのマウスES細胞から肝細胞への分化誘導を行った。その結果、人工肝臓装置内でのES細胞から肝細胞への分化が示され、培養2週間目以降よりアンモニア除去能やアルブミン分泌能などの肝機能の発現が認められた。次に、装置あたりの機能発現レベルについて、初代マウス肝細胞を充填した装置と比較した。その結果、指標とするマーカーによって異なるが、ES細胞を固定化した装置は初代肝細胞を固定化した場合の半分程度の機能を発現することが示された。すなわち、本培養技術によってES細胞の分化誘導を行った人工肝臓装置は、初代肝細胞を用いた場合の2倍程度の体積を準備すれば、同等の治療効果が見込まれることが示された。以上の結果、今後条件の最適化を進める必要があるが、本技術はES細胞を細胞源とした人工肝臓開発において有望であることが示された。
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