本年度の検討項目はマウスIgM型スーパー抗体酵素の遺伝子発現と完全ヒト型のTNF-alphaの探索を行った。 1)マウスIgM型スーパー抗体酵素の遺伝子発現 酵素活性を発揮する形で発現、精製して用いるためには適切なVectorと精製方法を選ぶ必要がある。そこで韓国の抗体酵素研究者より実績のあるプラスミドベクターの分与を受けて、まずは軽鎖単独の発現を試みた。すると、そこそこの量で可溶性画分への発現は認められたが、tag (Protein Aが用いられている)を使った精製だけでは純度が不十分であることが分かった。本研究で標的としているTNF-alphaは高価でaffinity columnを用意することが出来ないことと、ここで得られているスーパー抗体酵素はもともと活性が低く、精製方法に問題のある系を使って遺伝子工学的な改良を行うのは、残りの研究期間を考えると適当ではないと判断し、高純度に精製出来る系でヒト型の抗体軽鎖を用意して、その中からTNF-alphaに対する加水分解活性を示すものを抽出する方向に切り替えた。 2)ヒト型のTNF-alphaの探索 これまでの研究から、ヒトkappa型軽鎖の場合にはV germline geneのsubgroupを絞ることで酵素活性のある抗体鎖の抽出効率が上がると考えている。6種類のsbugroupの中でsubgroup IIに属する場合、酵素活性を示す割合が高いと考えられたことから、subgroup IIのヒト型軽鎖遺伝子をpET20b(+)ベクターで発現させた。18種類の遺伝子をクローニングし、Niクロマトグラフィーと陽イオンクロマトグラフィーの二段階精製によって高純度精製した軽鎖についてTNF-alphaに対する分解活性を調べたが、良好な結果を示すものは得られなかった。
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