抗原に対する高い特異性と親和性を示すモノクローナル抗体は、診断薬・治療薬への応用のみならず、分子細胞生物学の基礎研究における利用など、その応用範囲は極めて広い。本研究では、申請者らが独自に開発した試験管内選択法であるIVV法およびSTABLE法をさらに応用・発展させることにより、トータルな抗体作製・改変システムを確立することを目的とした。具体的には、(1)組み換え抗体の大規模な対応づけ分子ライブラリーを構築し、その中から、(2)ビーズに固定した抗原に特異的に結合する抗体を試験管内選択により選択し、さらに、(3)試験管内進化により抗体の特異性・親和性・安定性を向上させ、(4)得られた抗体の大量調製および特性評価を行う、という手順で研究を行った。本年度は以下の成果を得た。 まず、mRNAディスプレイ法の1種であるIVV法を用いて、合成一本鎖抗体scFvライブラリーから濃縮効率100万倍以上の高効率で、様々な抗原に結合するscFvや、on-rate選択およびoff-rate選択により親和性の向上したscFvを迅速かつ簡便に取得する手法を確立した(田畠ら)。また、同様の手法を単一のドメイン抗体(ナノ抗体)の試験管内進化にも適用することができた(木村ら)。 次に、DNAディスプレイ法の1種であるSTABLE法を用いて、二本鎖のFab抗体の定常領域に変異を導入し、熱安定性の高いFab変異体の試験管内選択に成功した(住田ら)。さらに、STABLE法のスクリーニング効率を上げるために、ビーズエマルジョンPCRとSTABLE法とを組み合わせた新しい手法を開発した(丸岡ら)。
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