研究概要 |
平成20年度は、モレキュラービーコン固定化ナノ針の挿入によって生細胞内のmRNAの検出を行うことを検討した。mRNAがナノ針表面のモレキュラービーコンにハイブリダイスすれば、モレキュラービーコンのFRETが解消され、ナノ針表面で蛍光強度の上昇が観察される。Hela細胞にモレキュラービーコン固定化ナノ針を挿入することによって、GAPDH、βアクチンのmRNAの検出を検討した結果、ナノ針表面において共焦点レーザー走査顕微鏡の観察から、蛍光強度の上昇を確認することが出来、mRNAが検出可能であることが示された。設計したモレキュラービーコンのmRNA認識配列は、ヒトとマウスの間で、GAPDHで3塩基、βアクチンで2塩基の違いがある。これらモレキュラービーコン固定化ナノ針は、マウス細胞に挿入しても蛍光強度の上昇が観察されず、応答しないことから、僅か2〜3塩基の差を識別出来ることが示唆された。また、GAPDH検出モレキュラービーコンでは、細胞に針を抜き差しすることによって、ナノ針表面の蛍光強度の上昇と低下が繰り返し起こることが示された。すなわち、細胞から抜去されたモレキュラービーコンはmRNAをリリースし、再び、分子内でステム形成を行い蛍光分子が消光していることを示している。また、ナノ針表面では10,000〜100,000分子程度しか固定化出来ないにもかかわらず、非常に迅速なmRNAの結合がナノ針表面という局所的な空間で起こっている。
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