研究課題
生きた細胞内におけるmRNA発現をネイティブな状態を維持しつつ観察する、あるいはmRNAを細胞に導入する技術を開発する。細胞内は、様々な生体分子、小器官が密集し、混在した空間であり、試験管内とは全く違った分子の挙動が観察される場である。このような細胞内という特殊な環境において、その細胞の状態を最も端的に表現する分子種であるmRNAを検出する手法を開発する。mRNAは微小管に沿って運搬され、細胞内の適正な位置に局在して翻訳されるなどの報告もあるが、1個の細胞内でmRNAがどのような挙動をしているかについては不明な点も多い。本研究では、細胞に対して非常に侵襲性が小さく、その挿入によって転写阻害をしない直径200nmのナノ針を用いて、細胞内のmRNAを定量的に評価する手法を確立することを目的としている。挿入されたナノ針表面のモレキュラービーコンにmRNAがハイブリダイズすれば、モレキュラービーコンのFRETが解消され、ナノ針表面で蛍光強度の上昇が観察される。ヒトのGAPDHで設計されたモレキュラービーコンのmRNA認識配列は、ヒトとマウスの間で3塩基の違いがあるために、ヒト細胞であるHeLaでは蛍光強度の上昇が見られるが、マウス小芽細胞であるC3H10T1/2では見られなかった。また、細胞内で上昇した蛍光強度は、針を細胞外へ抜き去り、培地中で測定すると減少し、複数の細胞で連続的に測定することが出来た。モレキュラービーコン修飾ナノ針の引き抜き動作によって、細胞外へmRNAを抽出していないことを示唆する結果が得られている。このことは、モレキュラービーコンという分子ツールを利用して細胞外から内へmRNAを導入する手法は機械的に不可能であることを同時に示唆している。
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Archives of Histology and Cytology (in press)
Cytoskeleton (accepted)
http://unit.aist.go.jp/rice/research/seitaiundou.html