研究概要 |
既に研究代表者が開発した柔軟動力学の並列型保存型解法コードNEDA2.0を用いて,(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発中の小型ソーラー電力セイル実証機IKAROSにおける膜面のスピン展開と実証機本体の運動の連成問題の開発評価を行った(IKAROSは平成22年5月18日に打ち上げ予定であり,本研究による解析結果と打ち上げ後の軌道上データとの比較を行う予定である).また,ゴサマー構造物の重要な課題の一つである,圧縮座屈後の構造特性の解析法として研究代表者が提案してきた圧縮剛性低減法を改良し,実験や他の高コストな解析手法と比較し,提案する手法による結果が低コスト(高速)で,かつ,実験や他の手法とよく合致することを示した.また,実験データに基づく,膜面の折り目の新しいモデルを提案した.これらの手法は,NEDA2.0に組み込まれており,IKAROSの開発評価に利用した.これにより,保存型解法の精度・適用範囲をさらに広げることができた.また,NEDA2.0を,JAXAをはじめ学外の研究者に配布し,実際に使用していただき,評価していただいた.特に,IKAROSの開発評価は充分に可能であるとの評価をいただき,NEDA2.0が汎用性のあるコードであることが示された.さらに,平成20年度に引き続き,品質工学による地上試験法の評価も行い,その宇宙実証として,インフレータブル膜構造物の宇宙展開実験を行なう超小型人工衛星の設計を行い,JAXAによる相乗り打ち上げに応募した.平成19,20年度の成果と合わせ,本研究による保存型解法が,ゴサマー宇宙構造物の解析・設計・開発・評価に有効であることが示された.現在,実機レベルでこのようなことができているのは研究代表者だけであり,これらの成果は平成22年度以降の次世代宇宙機の開発や,国内外のゴサマー構造物研究の発展に適用可能となった.
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