初年度に作成したプロトタイプ音響ネットワークシステムは、キャリア周波数がメガオーダーで高いためビームの指向幅が狭く、海上で振動子同士を向き合わせるのは難しかった。それを改善するために、今年度は、曲面素子を設計し指向幅を30°に広げた。 プロトタイプを小型化するために、デジタル信号処理プロセッサーDSPの実装研究を行った。ネットワークのベースとなる各種MAC(Medium Access Control)プロトコールを比較し、音響を伝送媒体とした場合の長短所をまとめ、その中から最適なプロトコールを選定した。さらに、MACプロトコールをベースに、音響ネットワークアダプターに必要な標準インタネットプロトコールのIPプコトコール、TCP/IPプロトコールの実装研究を行った。 本年度で実施した主要研究項目:・曲面素子を用いて指向幅を30°に広げた・既存MACプロトコールの比較・音響伝送にふさわしいMACプロトコールを選定・IPプロトコールの実装研究・UCP/TCPプロトコールの実装研究・双方向対向試験実施・音響ネットワークによる画像伝送の研究 いままで各種の海洋調査・観測活動が行われているが、水中での通信はケーブルを介して行うことが多いため、機器設置の妨げとなるだけでなく、水中ロボットの場合にはその行動範囲を制約されていた。この2年間の研究により、当初目的とした、近距離ではあるが下りと上りをそれぞれ1MHzと3MHzの搬送波に分けて、200kbps/600kbpsの伝送速度の高速で実用性の高い音響ネットワークシステムを開発した。本研究成果は今後実海域での応用が期待される。
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