研究概要 |
当初の計画のうち,これまでの3年間の研究の中で,必ずしも期待通りに実現できていない画像計測法の3次元解析と,原因不明の数値的な振動の問題に取り組み,実験結や観測結果と比較することによって計算法全体の検証と改良を行った. フロントの3次元構造を捉えるため,異なる色の光線を複数の平行な断面に照射する可視化実験を行い,得られた画像を色分解して,3次元的な運動を捉える方法を開発した.この方法によって,密度界面の3次元的な形状や内部の全体的な構造は捉えることができた.しかし,変動成分まで解像するためには,微粒子を取り除いたり,波長の離れた単一波長光を用いたり,散乱を抑制して断面間の干渉を極力抑制することが必要であることが分かった. 実海域での高レイノルズ数においてフロントで生じる空間的時間的な振動について調べた.水槽実験と数値実験において,先端部が横方向に波打つ3次元的な不安定性が観察され,その波長は局所的なレイノルズ数に依存するので,物理的に不安定な現象であることが明らかになった.数値実験ではさらに格子間隔や時間増分に依存する規則的な数値的な振動を伴うが,これは,解像度が不足した場合に,対流項に適用している勾配制限型のスキームから生じていることが明らかになった.その詳細なメカニズムは不明であるが,不連続性を押える制限を課すことによって,見かけ上,振動は抑制できることが分かった. 以上の通り,本研究で開発した非振動スキームと非接触の密度場計測技術は海洋フロントの生成と変動を計算と実験で正確に捉えることができ,その有効性が検証された.
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