研究概要 |
近年,海岸に原因不明の油成分漂着がおこり、沈船からの油流出の可能性が指摘されることがある.そのため,沈船の残存油の処理が課題として検討されはじめている。本研究では微生物を利用して深海における沈船の残存油を分解処理する可能性を検討するために、深海環境下でのフェノールの微生物分解について実験的に調査した。 滅菌した人工海水にC:P:N比が100:20:1になるように栄養塩を加え、さらに500ppmの濃度でフェノールを添加し,Pseudomonas stutzeri DSM 8034を2.7×10^8cells/mlあるいは3000~5000mから採取された深海採取底泥10g加えた。この海水試料を30℃で0.1MPaから20.0MPaにおいて所定日数攪拌混合し,海水中のフェノール濃度をGCによった分析するととともに、吸光度から菌数の変化を観察し,フェノールの微生物分解の進行を観測した. Pseudomonas stutzeriの場合、海表面条件下(0.1MPa)ではフェノール分解が,実験開始後7~12日目において急速に進行することが確認されたが、2.0MPa~5.0MPa加圧下では分解率および菌数に変化がなく,Pseudomonas stutzeriが深海環境下で石油分解を行う可能性は低いと考えられる.一方、深海泥試料を添加した場合は常圧よりも加圧下の方が分解が速く進行することが観察され、菌数に関しても同様の結果が得られ、加圧下でも有機物の微生物分解が進行する可能性が示された。また、分解速度の圧力依存性10.0MPaの場合が最も分解速度が速く.それ以下およびそれ以上では低下する傾向があり、最適な圧力範囲が存在することがうかがえる。 以上のように、深海条件下でも油類の微生物分解が進行する可能性が示された。
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