研究概要 |
本研究は,海面で反射した測位衛星電波を利用した海洋高度計の実現を目標としている.これは測位衛星を信号源としたバイスタティックレーダーであり,衛星から受信機に直接届く信号と,海面から反射して届く信号の遅延差から,海面高度を計測する. 本年度は,小型航空機を利用して高度1200mからの海面高度の計測を実施した.航空機上面には直接波用のアンテナを,下面には海面からの反射波を観測するためのアンテナを設置し,反射波観測用受信機として本研究で製作した2アンテナ受信機を使用した.受信機によって取得されたデータを昨年度開発したソフトウェア無線機によって後処理することにより,航空機と海面との相対距離の計測を行った.航空機の位置は,直接波用アンテナに接続された測量用2周波受信機を用いた精密測位により,10cm以下の精度ですることが可能である.反射波観測用受信機から得られた相対距離と測量用受信機から得られた航空機の精密位置より,海面高度を求めることができる. 本実験では,海面高度のリファレンスとして,東京大学地震研究所が高知県室戸岬沖に設置している津波ブイを利用した.このブイにも測量用GPS受信機が装備されており,海面高度の精密測位を実施することが可能である.反射波観測用受信機を搭載した小型飛行機で,津波ブイの上空を飛行し,同時に海面高度の計測を実施した.津波ブイと反射波観測用受信機から得られた海面高度の推定値と比較することで,未知のオフセットが生じてしまっているものの,観測雑音としては30cmの精度で高度計測が可能であることが確認できた.
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