研究概要 |
本研究は,海面で反射した測位衛星電波を利用した海面高度計の実現を目標としている.これは測位衛星を信号源としたパイスタティクレーダーであり,衛星から受信機に直接届く信号と,海面から反射して届く信号の遅延差から,海面高度を計測する. 昨年度までの研究では,ソフトウェア無線技術を用いた後処理によってGPS反射波の解析を行ってきた.ソフトウェアベースの受信機は,柔軟性が高く,アルゴリズムの開発に有効であるが,処理能力に限界があり,リアルタイムでの信号処理は困難である. そこで,本年度は,GPS反射波信号のリアルタイム処理を目標とし,FPGAをベースとした専用受信機の開発を実施した.開発プラットフォームとして,オーストラリアのUniversity of New South Walesが開発したNAMURU II GPS受信機を採用している.この受信機は,二周波受信機の開発を目的として設計されており,フロントエンドが二つ実装されている.本研究では,受信機の信号処理ロジックに改修を加えることで,本来は二周波対応の受信機を,L1信号のみ対応のデュアルアンテナ受信機として利用している.本構成では,一方のアンテナを直接波の受信に,もう一方のアンテナを反射波の受信に用いている. GPS信号シミュレータを使用した動作試験では,高度300mの航空機からの海面高度観測を模擬したシナリオにおいて,本システムにより10cmの精度で海面高度をリアルタイム計測できることが確認された.
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