研究概要 |
本年度の研究では、沿岸海域での洋上風力資源調査に対して、合成開口レーダー(Synthetic Aperture Radar,SAR)及びメソ気象モデルMM5を利用した複数のケーススタディに基づくその手法の検証及び改良とメソ気象モデル内の大気境界層スキームの改良を目指した。具体的には1)海上風推定に適したSAR画像の特定:本研究ではENVISAT/ASAR衛星からのSAR画像を用いたが、周波数や偏波、撮影モードの違い等により様々な種類のSAR画像が利用できる。本年度は各画像の特徴を明らかにすると共に、それぞれの海上風推定への適用可能性について検討した。白浜海象観測所の実測風速を対象とした検証の結果、ENVISAT/ASARによる推定風速RMS誤差及びバイアスは2.05m/s、-0.8m/sであり、MM5による推定風向を用いた場合のRMS誤差及びバイアスは2.26m/s,-1.07m/sであった。この結果はメソ気象モデルMM5とSARを組み合わせた風速推定が洋上風力資源評価に有効であることを示している。 2)メソ気象モデル内の大気境界層スキームの改良:デンマークの洋上風力発電施設を対象にした我々の研究により、メソ気象モデルに含まれる大気境界層スキームには風速鉛直プロファイルを計算する上で大きな問題があることが示された。本ステップではこの問題点の解決をMonin-Obukhovの相似則に基づく推定式を開発することにより図った。
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