研究概要 |
トロイダルダイバータ模擬試験装置NAGDIS-Tにおいて,接触・非接触プラズマ中で,等方性黒鉛,ダイアモンド様炭素(DLC),高配向熱分解黒鉛(HOPG)への重水素プラズマ照射実験を行った。等方性黒鉛では,非接触プラズマ中の炭素材損耗率が接触プラズマでの損耗率に比べて大きく,非接触プラズマ生成に伴う体積再結合により生成された重水素原子が損耗に大きく寄与していることが分かった。一方,DLC, HOPGは非接触プラズマ中ではほとんど損耗しないことが実験的に明らかになった。 また水素照射による炭素材(ダイアモンド,グラフェン)損耗過程を調べるために,古典的分子動力学計算(MD)を行い,低エネルギー水素イオシ照射(~1eV)ではダイアモンドは化学スパッタリングを起こさないことが明らかになった。以上の結果は非接触プラズマ環境下ではプラズマ対向壁をDLC膜で被覆することにより,炭素材料の損耗を低減することが可能であることを示唆している。 接触・非接触プラズマ中での重水素原子による炭素材損耗率の定量評価を行うため,分光学的手法を用いることで重水素原子密度の評価を行った。接触プラズマの場合は、基底準位から電子衝突により励起した原子の発光を利用する。絶対感度校正を行った可視分光器によるバルマー系列スペクトルの計測結果と衝突輻射モデル計算結果を対応させることで評価を行った。他方、非接触プラズマの場合は、ライマン系列からの発光の再吸収を利用した。可視分光器で計測されるバルマー系列スペクトルの計測結果から吸収がない場合のライマン系列の発光強度を推定し、実際の計測結果と比較することで原子密度の評価を行った。
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