研究概要 |
プラズマとの相互作用により時々刻々と変化(改質)していく壁の表面状態がどのように水素リサイクリングに影響を与えるかを理解することは、長時間定常プラズマを安定に維持するための重要な課題である。プラズマ・壁相互作用模擬実験装置APSEDASを用いて、水素及びヘリウムのプラズマをタングステン、モリブデン等の金属試料に照射し、試料表面での光学反射率の実時間測定を行った。厚さ1mmのタングステンミラーへの低エネルギーヘリウムプラズマ照射(電子温度:約11eV,フラックス:7×10^〈22〉He/s/m^2)においては、可視光領域での光学反射率が照射量約4x10^〈25〉He/m^2までは照射とともに約6%増加し、その後飽和傾向を示すことが分かった。この結果を薄膜中での光の多重反射モデルを用いて解析し、試料表面から約18nm以内で材料の改質が進んでいたことが明かとなった。この表面改質はタングステン表面でのヘリウムバブルの形成と考えられる。一方、同じタングステンミラーへの水素プラズマ照射(電子温度:約7eV,フラックス:1.4x10^〈22〉He/s/m^2)においては、光学反射率は照射量約1.5x10^〈25〉H/m^2までほとんど変化しないことが明らかとなった。また、タングステンへのヘリウムプラズマ照射中の実時間分光エリプソメトリー計測により、p偏光とs偏光の振幅比Ψはプラズマ照射中ほとんど変化しないが、p偏光とs偏光の位相差△はプラズマ照射とともに減少していくことが明らかとなった。さらに、タングステンと水素の共堆積層中の水素吸蔵量は、同条件での水素プラズマ照射によるタングステン基板の水素吸蔵量よりも少なくなることが示された。
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