プラズマに対向する壁の表面状態は、プラズマとの相互作用により時々刻々と変化(改質)していく。この壁の表面状態がどのように水素リサイクリングに影響を与えるかを理解することは、長時間定常プラズマを安定に維持するための重要な課題である。プラズマ・壁相互作用模擬実験装置APSEDASを用いて、タングステン表面改質時の水素吸蔵特性に関する実験を行った。表面にタングステン堆積層が存在する場合と、予めヘリウムプラズマを照射してヘリウムバブルが存在する場合において、低エネルギーの重水素プラズマを照射し、昇温脱離法を用いて、水素吸蔵量を評価した。照射に用いたプラズマの典型的なパラメータに関しては、電子密度は約2x10^<17>m^<-3>、電子温度は約8eV、空間電位は約24V、イオン粒子束は約3x10^<21>Dm^<-2>s^<-1>、フルエンスは約2x10^<25>Dm^<-2>である。タングステン表面にバブルが存在する場合には、重水素リテンションは約1.9x10^<20>Dm^<-2>であり、バブルが存在しないタングステンバルク材のリテンション(2.7x10^<20>)よりもわずかに少ない値であるが、重水素脱離の温度は低温側にシフトすることが分かった。また、タングステン表面にタングステン堆積層(約30nm)を物理蒸着させた試料への重水素プラズマ照射後のリテンションは約3.5x10^<19>Dm^<-2>であり、堆積層のない試料のリテンションの5~10倍程度低い値となることが明らかとなった。これは、タングステンバルク表面と堆積層との界面が重水素の拡散障壁となっていること示唆していると考えられる。
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