研究課題
原子炉炉心燃料の開発には、原子炉運転中に想定される様々な使用条件に対する物性データの整備が不可欠である。本研究では、原子炉炉心燃料の中でも実験データの少ないプルトニウム(PuO_<2-x>)酸化物の不定比性について理論計算と実験の両面から研究した。PuO_<2-x>試料は高放射性物質であることから、極微量(〜数十mg)にて精度良く^<17>O-NMR測定を行う必要があり、このためには出発原料中の^<16>Oの除去、^<17>Oへの置換を高効率で行なう必要があった。本研究では窒化物を経由した調製方法により、これらの要求をクリアしNMR用試料調製手順を確立した。本年度はPuと物理化学的特性が類似するCeを用いた模擬実験を行った。不定比の異なるいくつかの^<17>O-NMR測定用のCe^<17>O_<2-x>を調製に成功した。これによりPuO_<2-x>のNMR用試料調製についても達成できる見通しを得た。本年度は作成したCeO_2、CeO_<2-x>の^<17>O-NMR測定を行った。CeO_2は多くの点でPuO_2と同様の物性を示すため、CeO_2研究はPuO_2の欠陥構造解明のために重要である。欠陥のないCeO_2に比べて欠陥を持つCeO_<2-x>の^<17O>-NMRスペクトルは、半値幅にして約2.2倍も広がることがわかった。これから^<17>O-NMRスペクトルが酸素欠陥に敏感であり、欠陥評価に有効であることを明らかにした。また、第一原理計算コード(VASP)をインストールしNMRの実験結果を解析できる環境を整備した。