原子炉炉心燃料の開発には、原子炉運転中に想定される様々な使用条件に対する物性データの整備が不可欠である。本研究では、原子炉炉心燃料の中でも実験データの少ないプルトニウム(PuO_<2-x>)酸化物の不定比性について実験と理論計算の両面から研究した。 ^<17>O-NMR測定用不定比PuO_<2-x>、試料を調製した。プルトニウム酸化物はα放射体であるため、試料調製作業はすべて日本原子力研究開発機構燃料試験課(AGF)にて、グローブボックスの中で行った。窒化物を経由して酸化物中の酸素を高効率で^<17>Oへ置換する方法を適用し、調製した定比Pu^<17>O_2試料の還元熱処理により不定比を調製した。不定比組成の決定は、重量法により行なった。 PuO_<2-x>の試料に関して^<17>O-NMR測定を行った。予測された通り、一本の^<17>O-NMR信号が低温まで観測された。また低温4Kまで磁気転移がないことが確認された。ナイトシフトの値に温度依存はなく、静磁化率とコンシステントであった。 理論計算としては、上述した実験からの情報を元に、まず第一原理計算を用いて、安定な結晶構造と凝集エネルギーを計算計算した。第一原理計算によって分かるのは基底状態(絶対零度、0K)の情報である。実際の使用条件での物性を評価するには、温度の影響を評価する必要がある。結晶構造を持つものでは、これは結晶格子の熱振動で評価する事が出来る。本研究では、結晶格子上の各原子に働く力を第一原理計算によって算出し、格子動力学の手法を用いて格子振動の分散関係を導いた。この情報をもとに統計力学の関係式を用いてHelmholtzの自由エネルギーを導出した。これをGibbsの自由エネルギーに変換し熱力学データベースを整備した。この熱力学データベースを用いて状態図を再現できることを確認した。
|