研究概要 |
これからの原子力研究開発利用において、長寿命核分裂生成物(LLFP)を他の核分裂生成物から分離して、安定核種あるいは短寿命核種に核変換処理することが重用である。このLLFPの核変換処理研究において、LLFPの中性子捕獲反応の精度良い断面積データが必要不可欠である。本研究では、現時点では直接測定が不可能なLLFPであるSe-79に対して、Se-79の安定同位体について捕獲断面積と捕獲ガンマ線スペクトルを系統的に測定し、これらを同時に統一的に理論解析することにより、Se-79の高速中性子捕獲反応機構に関しての知見を得、その結果、Se-79の高速中性子捕獲断面積の理論予測精度を飛躍的に向上させることを目的としている。 平成21年度は、高速中性子捕獲実験用試料Se-74,76,77,78,80,82の調整、及びその他の実験準備を行った。そして、東京工業大学・原子炉工学研究所・広領域線質放射線照射実験室に設置されている3UH-HC型ペレトロン加速器、超高感度ガンマ線検出装置(重遮蔽体付き大型コンプトン抑止型NaI(T1)検出器)、及びデータ収集・処理装置を用いて、入射中性子エネルギー550keV付近において、Se-74,76,77,78,80,82に対する測定を実施した。測定によって得られた実験データの処理を、我々のグループでこれまでに整備・開発してきたコンピュータ・プログラムを用いて行い、これらの核種の中性子捕獲断面積及び捕獲ガンマ線スペクトルを導出した。また、これまでの測定によって得られたSe-74,76,77,78,80,82の高速中性子捕獲断面積及び捕獲ガンマ線スペクトルに対して理論解析を実施し、LLFPであるSe-79の信頼性の高い計算入力パラメータを得た。そして、そのパラメータを用いたSe-79の捕獲断面積の理論計算を行った。最後に、本研究の成果を取り纏めた。
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