前年度、パルスラジオリシス測定装置の改良を行うとともに、レジストモデル化合物のパルスラジオリシスを行った。また、極端紫外光露光システム、電子線リソグラフィシステムを使用し、レジストモデルシステム中での反応中間体の挙動を解明した。さらにその生成過程を定式化し、シミュレーションと実験結果を比較することにより、反応中間体の空間分布および生成効率を明らかにした。本年度はモンテカルロシミュレーションコードを拡張し、誘電率、酸発生剤の反応半径、濃度、電子の熱化距離等の材料の物性が加工後のレジスト像に与える影響を解明するとともに、電子の熱化距離の影響を抑制するための必要最低限の酸発生剤濃度を明らかにした。さらに、THF溶液中での溶媒和電子と酸発生剤の反応の詳細を調べ、ピコ秒領域におけるTHF溶媒和電子の初期収量の減衰の酸発生剤分構造依存性が、溶媒和電子との反応速度定数の酸発生剤分構造依存性と対応しないことを見出した。初期収量の減衰は熱化電子と酸発生剤との反応を反映していると考えられ、この初期収量の減衰を固体レジストフィルム中での酸発生剤の反応性を記述する新たなパラメーターとして使用できる可能性が示された。
|