研究課題/領域番号 |
19360433
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 伊佐務 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (20005987)
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研究分担者 |
李 徳新 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (40281985)
山村 朝雄 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (20281983)
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キーワード | ウラン電池 / ウランV価錯体 / 単結晶 / DBM錯体 / 磁化率 |
研究概要 |
平成19年5月中旬に、ウラン電池の放電時正極活物質であるウランV価錯体について、「不均化により分解し安定な単結晶を得られない」という従来の知見を覆し、ウラン電池の電池セルを用いて調製した溶液から、容易に単結晶を得ることができることが判明した。この端緒的な発見は、不安定なウラン電池活物質錯体の単離とその錯体構造検討を通じた安定性向上に新概念をもたらし、本研究の成果を飛躍的に高めるだけでなく、当該研究分野の発展に対する革新的な寄与を期待させる潜在的可能性を持つものと考えられる。 この理由からウランV価錯体が安定化された原因を究明するために、新たな知見である錯体の詳細分析を優先することとした。 このように、ウラン錯体の設計合成(H19年4月〜5月)、新たな知見である錯体の詳細分析(H19年6月〜H20年3月)、ウラン錯体の再設計合成(H19年12月〜H20年5月)、ウラン錯体の単離・電極反応・構造の検討(平成20年4月〜H20年9月)を行った。 ジベンゾイルメタン(DBM)、ジピバロイルメタン(DPM)を配位子とするウランVI価錯体についてウラン電池セルを用いてウランV価錯体単結晶を育成し、結晶構造の決定を行った(Fig.1、2)。DBM錯体では二重架橋で平行な陽イオン・陽イオン錯体という珍しい構造を示す。これは、UO2+の陽イオン間相互作用に、配位子であるDBMのベンゼン環に働くπ-π相互作用が協調するためであると推察できる。配位子がDPMでは単核錯体が得られた。 これら錯体の磁化率の温度変化測定(Fig.3)を行った。DPM錯体の有効磁気モーメント(0.74μB)は温度に依存しない。DBM錯体は温度依存性を示しており、DBM錯体において配位子場によるクラマース縮重と軌道角運動量の消失による2F5/2項の上昇を示唆する。いずれもμeffがU5+の自由イオンの理論値(2.54μB)より小さいことから、f電子の結合への関与が示唆される。さらに、DBM錯体の反強磁性的パラメータΘが負に大きく、二量体構造のために最近接ウラン間距離(3.48Å)がDPM錯体(8.52Å)より短いためであろうと推察できる。このように、配位子によりウランV価錯体の物性を制御できる可能性を示した。
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