研究概要 |
電池活物質として優れたウラン・アミド錯体を創製するため、テトラアミド配位子の分子設計、合成、電気化学的検討という一連の過程を繰り返しながら、速い電極反応速度をもつウランの新規テトラアミド錯体を探索した。 テトラケトン配位子を合成した実績に基づいて、2つのジアミド配位子を分子設計の出発点とした。配位子の数グラムずつの合成を行った。 ウラン(VI)錯体、ウラン(IV)錯体を調製し、CHNSO元素分析装置(既存)およびICP発光分光装置(既存)を用いて錯体の同定を行う。グローブボックスに併設して設置されている単結晶X線構造解析装置に試料吹付低温装置を設置し、大気中で必ずしも安定でないウラン・ジアミドウランV価錯体が溶液の中での安定性は、f1配置の遷移に基づく1500-1800nm領域の吸収帯強度の測定、f1配置の遷移を電子スピン分光装置で測定、フェリセニウム(Fc+)を酸化剤として酸化滴定により確認する。ウランIII価錯体についても同様である。 ウラン3価錯体は非ウェルナー型錯体が多数知られており、本質的特徴がU3+の軟らかさにあることを示唆している。我々は、ウラン3価錯体の出発物質であるUC13(thf)nの簡便な調製法を開発し、ウラン3価および希土類3価、2価とマロンアミド誘導体との錯体について分光、磁性、電気化学の検討を進めてきた。なかでも、UL4×3(L=N, N, N', N'-テトラメチルマロンアミドorN,N'-ジメチルマロンアミド、X=BPh4 or Cl)についてはウランIII価錯体の有効磁気モーメント(195μB)はフリーのU3+の理論値より相当小さく、この錯体におけるウランIII価の遍歴的性質を示唆する。
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