本年度は、(1)H2回収試験による実験、(2)木質系+触媒による実験及び(3)上記実験データに伴うプロセスシミュレータによる評価とプラント最適化の検討を実施した。 まず(1)の実験においては、100℃に加温したモレキュラシーブ4Aを充填した反応管に改質温度800〜950℃に保持し、木質系原料の熱分解ガスを反応させた改質ガスによるH2ガスの回収効率を定量化した。なお、反応管を通過するH2量が回収量と定義した場合、改質ガスの濃度により変化するが、48.9〜68.3%の回収効率が得られた。次に、(2)における実験においては、CaO(酸化カルシウム)を添加することにより、熱分解ガス中のCO2濃度が約30vo1.%から約2vo1.%まで減少する結果が得られた。これは農業系廃棄物の1つであるきのこの廃菌床中に含まれるCaO効果に関する検討であり、この結果から、本研究で対象としているH2製造のCO2負荷が大きく低減する可能性があることが見出された。 また、(3)については、本年度においては、これまでの熱分解組成、改質ガス組成及び改質反応における平衡温度アプローチ差のデータを用いてプロセスシミュレータを作成していたが、これに実プラントで課題となっている各機器の熱損失のデータを反映させ、さらにヒートキャリアによる熱移動に関して熱伝導度を測定することにより、そのデータを反映させることを試みた。この結果、従来の評価に加え、熱移動に関する時間的な制約条件を加味することで、最適なヒートキャリアのサイズ等の知見を得ることが可能となった。
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