本年度は、1.畜産系廃棄物(牛糞)によるH_2回収能力の検討及び2.BTプロセスの利用可能性の検討を実施した。 1.については、牛糞を原料とした実験を実施した。特に、昨年までに他のサンプルで実施したガス化特性の把握(熱分解温度、改質温度、スチームカーボン比による検討)及びPSAの動作条件によるガス収率の検討を行った。この結果、改質温度850℃でH_2濃度約50Vol.%となることが確認された。なお、改質温度を上昇させてもH_2濃度の変化が見られなかった。実験結果をもとにしたBTプラントのプロセス設計においては、これまでの検討結果に加え、詳細な解析結果から、プラントの熱バランスの関係からH_2製造能力(PSAの吸着能力)とH_2生産量との間に最適条件が存在するという知見が得られた。 また、2.のシステム分析においては、パプリカ施設をモデルとして、宮城県の施設園芸(施設面積4.6ha)を視察し、重油、電力消費量の実データのほか、栽培促進用に投入されるCO_2(化石由来)量、またLCAの見地から、栽培に係る肥料等の間接CO_2排出量を含め既存施設におけるパプリカ1個あたりの栽培に係るCO_2排出量を検討した。このとき全体システムのCO_2削減効果については、プラントからの排熱利用及び排ガス中に含まれるCO_2(バイオマス由来)の利用、及びH_2製造による化石由来(天然ガスを想定)のH_2との代替効果を仮定した。この結果、プラント規模15t/dを想定した場合、牛糞からのH2製造能力は約118.3万Nm^3/年、H_2製造効率は16.7%-LHVとなった。一方、上記提案システムによるパプリカ1個当たりのCO_2削減量は、約440g-CO_2/個と推察された。 その他、将来的な適用事例として、実際に木くずを用いて、H_2燃料を製造し、16cm2(メガケム社製)のPEM-Cellを用いた起電力特性を測定した。このとき、約0.3Vの開回路電圧を測定した。なお、I-V特性等については、別途、電流密度が大きくする方法等を検討するなど、ガス供給方法等を含め今後関連研究等で対応していくこととしたい。
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