研究課題
今年度の研究により、以下のような成果が得られた。1.「ニンフ・ワーカー」分化の遺伝モデルの検証(1)ムカシシロアリをオーストラリアより日本へ輸入し、飼育条件の検討と性判別の予備実験を行った。これらについては性判別と条件設定に成功し、今後幼形生殖虫が分化し次第、交配実験を行う。(2)オキナワシロアリで交配実験を行った結果、子はヤマトシロアリと基本的に同様な分離比でカスト分化した。従って本属はカスト決定遺伝システムを共有するといえる。ただし、分離比は期待値に比ベワーカーが多くなる方向へ偏った。(3)イエシロアリとタカサゴシロアリでの予備実験の結果、両種とも通常の飼育実験で幼形生殖虫を得ることは困難であった。現在有翅生殖虫にコロニーを創設させ、そこから生殖虫を除去することで幼形生殖虫を得るための実験を継続中である。2.DNA多型マーカーのマッピングとカスト決定遺伝子座の探索ヤマトシロアリとカンモンシロアリを交配させ、現在F1までを得ている。さらに有翅虫の採集、コロニー作成、MSマーカーの準備を継続中である。3.カスト分化に及ぼす環境要因の影響の解析(1)有翅生殖虫ペアからなる初期コロニーで、有翅生殖虫の除去によってワーカー型幼形生殖虫を分化させ,交配によって生まれる子のカスト比を調べた。いずれの組合せでも子はワーカーへ分化し,生殖虫の存在が強いワーカー化の要因となることが示された。(2)有翅生殖虫のいる初期コロニーから、2重の金網で隔てられた飼育ケースでニンフになる遺伝子型の卵を飼育したところ、多くはニンフへ成長したが一部中間的形態のものが生じた。生殖虫がニンフ遺伝子型の卵をワーカー化させる機構に、低揮発性のフェロモンが関わる可能性がある。
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