研究概要 |
傾斜屈性とは、茎や根が重力方向から一定角度を保って成長する現象をいう。普通、主茎や主根は屈地性を示して重力の正方向や負方向に成長するが、側枝や側根は傾斜屈性を示すことが多い。その意味では、傾斜屈性の方が正や負の重力屈性より普遍的な現象といえるかもしれない。近年、正や負の屈地性の仕組みは相当解明され、平衡石の動きを検知する仕組み以外の分子機構については、主要な構成因子はほぼ出そろった感があるが、傾斜屈性の仕組みは全くといっていいほど分かっていない。そこで、本研究では側根が発生後、野生型より長期にわたって傾斜屈性を示すシロイヌナズナhy5突然変異体を材料にして傾斜屈性の分子機構を明らかにすることを目指した。まず、hy5側根傾斜屈性を抑制する抑制突然変異を単離・同定する研究をおこなった。その結果、抑制突然変異体候補を5系統単離した。その多くが、野生型よりやや小さくて緑の薄い系統だった。その内の一つの系統について重点的にマッピングをおこなった結果、5番染色体の下腕、27遺伝子を含む領域に絞り込むことができた。次に、Aux/IAA遺伝子族を介したオーキシン信号伝達に関する拮抗阻害剤(Hayashi, et.al., 2008)のhy5側根傾斜屈性に対する効果を調べたところ、拮抗阻害剤を与えると傾斜屈性から正常重力屈性への転換が早まることが分かった。このことから、オーキシン信号伝達が過剰に起こりすぎることがhy5で傾斜屈性を引き起こすとするモデルが得られるので、現在このモデルの妥当性を検討している。
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