研究概要 |
植物細胞壁は成長や分化の制御を初め、生体防御と細胞間情報伝達、物質の輸送と貯蔵など、多岐に亘る役割を担う植物独自の細胞装置である。これらの細胞壁機能は数千を超える細胞壁関連タンパク質群の協調した機能を介して発揮されると考えられる。しかし、その分子過程は未だ多くが不明である。我々は、シロイヌナズナの道管機能と細胞伸長においてそれぞれ必須の役割を担う細胞壁タンパク質GRPとXYL1の機能が分泌後の修飾および細胞壁中の移行/局在の過程を介して制御されていることを最近見いだした。本研究では、この新知見を手がかりにして,酵素,リガンド、構造タンパク質などの細胞壁中に分泌されるタンパク質について,その移行制御の分子機構、およびその制御に関わる分子を同定し,細胞壁中でのタンパク質Traffickingの存在を実証することを目指して研究を進めた。細胞壁中でのタンパク質移行/局在の過程制御に関与する制御因子を特定するために、初年度は、その標的となるタンパク質の特定を目標にして、根からカルスを誘導する過程で変動する細胞壁タンパク質の動態を二次元電気泳動とMALDI-TOF/MSによるプロテオーム解析により探索した。その結果、細胞壁中に分泌された後、修飾状態の異なるアイソザイムとして存在するタンパク質を多数同定した。また、それらの細胞壁タンパク質の中には、プロテアーゼを含め、タンパク質を基質とする酵素と推定されるタンパク質機能を持つものやタンパク質間相互作用に関わると推定されるドメインを持つタンパク質が多数含まれることが明らかとなった。
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