研究概要 |
シロイヌナズナの道管機能と細胞伸長においてそれぞれ必須の役割を担う細胞壁タンパク質GRPとXYL1の機能が分泌後の修飾および細胞壁中の移行/局在の過程を介して制御されていることを,我々は見出してきた。本研究の目的は,この新知見を手がかりにして,酵素,リガンド,構造タンパク質などの細胞壁中に分泌されるタンパク質について,その移行制御の分子機構,およびその制御に関わる分子を同定を目指すことである。20年度までの研究では,細胞壁中でのタンパク質移行/局在の過程制御に関与する制御因子を特定するために、シロイヌナズナ芽生えの根のアポプラスト中に分泌される細胞壁タンパク質の動態を二次元電気泳動とMALDI-TOF/MSによるプロテオーム解析により探索した。その結果、細胞壁中に分泌された後、修飾状態の異なるアイソザイムとして存在するタンパク質としてペプチダーゼC1Aファミリーに属するシステインプロテアーゼ遺伝子群を同定した。このタンパク質ファミリーはシロイヌナズナでは32のメンバーより構成され,そのうち9遺伝子は根の細胞壁中に分泌されていることを見出していた。このタンパク質ファミリーの二次元電気泳動パタンの変化より,シロイヌナズナの根の脱分化誘導前後で、メンバーの中に,発現強度や修飾や分子量の変化するものがあることを見出した。本年度は,更に二次元電気泳動パタン上で同様の挙動を示すタンパク質の中には,ペプチダーゼC1Aファミリー以外にも、タンパク質を基質とする酵素と推定されるタンパク質機能を持つものや,タンパク質間相互作用に関わると推定されるドメインを持つタンパク質が多数含まれることを明らかにした。本研究では,これらのタンパク質の植物体内における機能を解明するには至らなかった。この点は今後の課題である。
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