研究概要 |
本研究ではCDK活性を負に制御する細胞周期制御因子に焦点を絞り、それらの機能解明を通して幹細胞集団を一定数維持する機構を明らかにすることを目的としている。まず、細胞周期の負の制御因子としてシロイヌナズナのCDKインヒビター(KRP)の解析を進めている。promoter-GUS,promoter-KRP::GFP/GUSといったマーカーラインを確立し発現領域の解析を開始した。また、KRPの多重変異体の作成を進めている。 PASTICCINO2(PAS2)もCDK活性を負に制御する因子であるが、その機能は不明であった。そこで、まずGFP/GUSマーカーラインを作成して発現部位を確認したところ、分裂組織のL1層と表皮特異的に発現していることが明らかになった。一方で、pas2変異体では内側の細胞層で異所的な細胞分裂の亢進や、アミロプラストの異常蓄積が観察された。そこで、表皮特異的なプロモーター下でPAS2遺伝子を発現させたところ、pas2変異体の表現型を完全に相補することが明らかになった。これらの結果から、表皮から内側の細胞層へ何らかのシグナル物質が伝達されている可能性が示唆された。 一方、本研究では分裂組織における細胞周期の時空間的な制御について解析するために、組織レベルで細胞周期をモニターする系の開発も行っている。G1/S期のレポーター遺伝子候補をGUSに連結してシロイヌナズナに導入したところ、分裂組織で細胞周期依存的な発現パターンが観察された。現在、タバコBY2細胞に導入して、細胞周期における発現変動について詳細に解析しているところである。
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