研究課題
基盤研究(B)
植物におけるタイプ1プロテインフォスファターゼの役割の研究を気孔孔辺細胞に着目して行い以下の成果を得た。まず、この酵素は触媒サブユニットと調節サブユニットがヘテロダイマーを形成して機能を発揮することから、この調節サブユニットの探索から仕事を開始した。その結果、2つの興味ある調節サブユニットの候補が得られたので詳細に解析した。1つはインヒビター3である。まず、機能解析を行うためソラマメのインヒビター3のオーソログを探索した。そのシロイヌナズナのオーソログを用いて試験管内での結合実験を行うとインヒビター3がタイプ1プロテインフォスファターゼの触媒サブユニットとのみ結合し、良く似た配列を持つタイプ2A プロテインフォスファターゼとは結合せず特異的結合であった。インヒビター3は触媒サブユニットの脱リン酸化活性を10nM の濃度で完全に阻害した。さらに、インヒビター3の結合部位に相当するアミノ酸を置換するとこの阻害は消失した。インヒビター3と触媒サブユニットが細胞内で結合している事を、それぞれのタンパク質の抗体によって免疫沈降により、証明した。インヒビター3と触媒サブユニットを孔辺細胞に同時に発現させるとインヒビター3存在時には触媒サブユニットは核と細胞質に存在したが、両者の結合を阻害すると触媒サブユニットは核には存在しなくなった。以上のことから、インヒビター3はタイプ1プロテインフォスファターゼの調節サブユニットと結論された。そこで、インヒビター3の孔辺細胞における機能解析を行うべく、このインヒビター3の遺伝子にT-DNA が挿入されたタグラインを取得し、そのホモラインの採取を試みたが、すべて致死になった。その原因を追及すると、胚発生の段階で成長がストップし、発生の初期段階でインヒビター3がフォスファターゼ活性を制御し、発生をコントロールするものと推定された。また、このインヒビター3のRNAi ラインも同様の表現型を示した。以上から、インヒビター3がタイプ1プロテインフォスファターゼの調節サブユニットとして機能していることが示された。これは植物細胞では初めての例であるが。気孔孔辺細胞における機能解析は不首尾であった。現在、もう一つの調節サブユニットの解析が進行中である。
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