研究課題
イネ培養細胞における[Ca^<2+>]_<cyt>変化や活性酸素種(ROS)生成のリアルタイム測定系を確立し、糸状菌由来の種々のエリシター処理直後に誘導される初期応答を経時的に解析した。その結果、ROS生成やMAPキナーゼの活性化に先立ち、[Ca^<2+>]_<cyt>が上昇すること、エリシターシグナルの受容後1分以内に、感染防御応答に特異的なタンパク質リン酸化反応を介した制御系により、Ca^<2+>動員が負のフィードバック制御を受ける可能性が示された。一方、タンパク質性エリシターTvXにより誘導される過敏感細胞死は、電位依存性Ca^<2+>チャネル候補OsTPC1の機能破壊株(Ostpcl)において顕著に抑制される。そこでOstpcl株の[Ca^<2+>]_<cyt>測定系を確立し、様々なストレス誘導性[Ca^<2+>]_<cyt>変化を解析した結果、TvXにより誘導されるOsTPC1がTvX誘導性Ca^<2+>動員に関与する可能性が示唆された。機械刺激に応答したCa^<2+>動員の制御候補因子OsMCA1を同定した。OsMCA1は、酵母の機械刺激作動性Ca^<2+>チャネル候補Mid1の変異株を部分的に相補した。OsMCA1の発現は、植物体の広範な組織で見られた。OsMCA1発現抑制株では生育遅延・穂軸の短化等の表現型が見られた.OsMCA1発現抑制株の[Ca^<2+>]_<cyt>測定系を確立し、種々の刺激に対するCa^<2+>動態の変化を解析した。低浸透圧刺激により細胞膜を介した細胞質へのCa^<2+>流入を含む細胞質への一過性のCa^<2+>動員の抑制が見られた。イネの2種のプロテインキナーゼOsCIPK14/15は、エリシター処理により急速に発現が誘導されるが、Ostpc1破壊株では発現誘導が顕著に抑制された。OsCIPK14/15は、FISLモチーフを介してCa^<2+>センサータンパク質OsCBL4と強く相互作用した。RNAi法によるOsCIPK14/15発現抑制株では、TvXにより誘導される過敏感細胞死、PBZ1等の防御遺伝子の発現誘導などの応答は顕著に抑制された。逆にOsCIPK14/15過剰発現株では、TvX誘導性の過敏感細胞死が亢進された。こうした結果は、イネの感染防御応答やプログラム細胞死の制御に、Ca^<2+>制御型プロテインキナーゼOsCIPK14/15が関与する可能性を示唆する。
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Japanese Scientists in Science(サイエンス誌に載った日本人研究者)
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