研究概要 |
不完全変態の直翅目昆虫コオロギと無翅目昆虫シミの概日時計の分子機構を明らかにすることにより、昆虫時計発振の分子機構の一般性と多様性を検討するとともに、その行動リズムおよび光周性への関与を明らかにすることを目的とした研究を行い、本年度は以下の成果を得た。 1.コオロギ時計遺伝子period (per),timeless (tim)について,発現リズムを昼行性の幼虫と夜行性の成虫で比較したところ、いずれも明暗条件下では明期の終わりから暗期の初めにかけてピークを持つリズムを示し、このリズムが恒暗条件下でも継続することがわかった。幼虫初期には恒暗条件下でのリズムがやや不明瞭となる傾向があった。 2.RNA干渉によりperをノックダウンした上で、光周期下でper, timおよび時計関連遺伝子pdfの発現をreal-time PCRで測定したところ、成虫ではper以外の遺伝子の発現レベルは低下しなかったが、3令幼虫ではtim, pdfも低下することから、成虫と幼虫の時計機構が異なる可能性が示唆された。 3.クローニングしたDNAから推定されるアミノ酸配列に基づいて、ペプチドを合成してウサギを免疫し、コオロギ時計蛋白質PERIOD、 TIMELESSのポリクローナル抗体を作成した。現在、免疫組織化学を行い、抗体の特性を解析中である。また、CLOCKとDOUBLETIMEについてもペプチドを合成し、ウサギを免疫する準備を整えている。 4.光電式センサーを用いて、恒温・明暗周期、恒暗の各条件下でマダラシミ成虫の歩行活動を解析し、夜行性のリズムを示すことを明らかにした。 5.既知の時計遺伝子の塩基配列を参考にして設計した縮重型プライマーを用いて、マダラシミ概日時計遺伝子のクローニングを行い、tim, clockの部分配列を得た。
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