研究概要 |
これまで本申請者らは,細胞1個中のmRNAの定量方法の開発に成功していた。この方法はリアルタイムPCR法をアレンジしたもので,実際に実験動物モノアラガイにおける学習記憶のキー、ニューロンであるCGCでは,1つの細胞の中に転写調節因子CREB2のmRNAが数百コピー存在し,しかも味覚嫌悪学習によって半分以下に激減することを示すことができた。逆に予想に反し,もうひとつの転写調節因子CREB1は数コピーしかなく,これは測定範囲外であり,しかも学習によって増加しないこともわかった。したがって,平成19年度では,CREBのタンパク質の量の変化ならびにリン酸化の程度に着目し,キー、ニューロン1個中のタンパク質定量の方法を開発することを試みた。具体的には,学習、記憶に関与しているニューロン1個内のCREB1およびCREB2のタンパク質を定量する方法を,サンドイッチELISA法として開発した。サンドイッチ法なので,まずはCREB1およびCREB2おのおのについて2種類の抗体を用意した。そして,都合4種類の抗体の特異性などを調べ,ELISA法に発展させた。一方でこのELISA法をさらに高感度化するために,酵素サイクリング法と組合せて,その至適条件の検討を行った。酵素サイクリング法の脱水素酵素のターンオーバー数の向上を検討し,最適値(500回転/分)を見出した。さらにはこの酵素サイクリング法におけるブランクの上昇について検討し,その低減のための対策を考えた。その結果,基質を修飾することが必要であることがわかり,これは有機化学の研究者とともに作製することが決まった。
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