研究概要 |
昨年度に引き続き, 土壌性鞭毛虫類の多様性と系統を解明するために, 本年度はおもに北海道札幌市を中心とし, さらに神奈川, 東京, 福井, 京都, 兵庫, 香川において調査をおこなった。表層10cm以内で採取した0.1gの土壌と液体培地を混合して粗培養を行ない, 約1週間以内に出現した鞭毛虫類を単離した。結果として約70株の培養株を確立することに成功した。各々の培養株について光学顕微鏡に基づく形態観察, 一部のものについてはSSU rDNAに基づく分子系統解析, 電子顕微鏡による形態観察を行なった。その結果, 昨年までに確認されたCercomonas, Thaumatomonas, Heteromit属(以上ケルコゾア類), Spumella-like flagellates(黄金色藻類), Goniomonas sp.(クリプト藻類), Bodo spp.(キネトプラスト類)に加え,本年度は渦鞭毛藻の一種,襟鞭毛虫類,Paraphysomonas spp., Spumella-like flagellates(黄金色藻類), Aurigamonas soils, Spongomonas sp., Neocercomonas spp., Heteromita sp.(以上ケルコゾア類),Enosiphon spp.(ユーグレナ類)など我が国に於いて土壌性鞭毛虫類として新たに認識された。全体的に種レベルの同定は今後の課題であるが, Paraphysomonasの2株および襟鞭毛虫の2種,および渦鞭毛藻の1種は新種である可能性が高い。初年度に比べて新たな分類群の存在が明らかになり, 日本の土壌性鞭毛虫類の多様性が徐々に明らかとなってきた。今後は, 個々の種の同定を進めるとともに, さらなる多様性解明を推進する。
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