研究概要 |
全世界の熱帯・亜熱帯の海岸域に1種が一様に分布する汎熱帯海流散布植物について、複数分類群の遺伝的分化のパターンを分子マーカーを用いて解析した。分類群横断的な解析を行うことにより、海流による頻繁な長距離種子散布が、全球的な分布域の維持にどのように貢献しているかを明らかにすることができる。本年度は、ナガミハマナタマメ、ハマアズキ、Rhizophora mangleについて、2種類の遺伝マーカーを用いた集団解析を行った。なお、以下の研究には、高山浩司博士(日本学術振興会特別研究員PD)が研究協力者として参加した。 1.葉緑体ハプロタイプを用いた集団構造の解析:ナガミハマナタマメとハマアズキについて、前年度策定した葉緑体マーカーを用いて、汎熱帯域における地理的構造を集団レベルで明らかにした。全世界熱帯域から得られた約40集団のサンプルを解析することにより、ナガミハマナタマメでは他の汎熱帯海流散布植物と同様、新大陸の東西で、明瞭な地理的構造が検出された。また、ハマアズキでは、太平洋の北半球・南半球およびインド洋域といった、地域集団ごとの遺伝的分化が示された。 2.核のローコピーマーカーを用いた解析:前年度開発したG3PDH, CesA等の核マーカーを用いて、全世界のオオバヒルギ属植物の遺伝的分化を解析した。その結果、インド洋-西太平洋地域の種と大西洋-東大平洋地域の種が、地域ごとに分化してきた過程と、種分化後の二次的接触により、雑種を形成している実態が明らかになった。。 3.海外調査:グアムおよび台湾で現地調査を実施し、ハマアズキ、ナガミハマナタマメ、Entadarheediiの系統地理学的解析に必要なサンプルを収集した。
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