初年度にニュージーランドで採取して来たコモウセンゴケの種子を蒔き、細心の注意のもとに栽培し開花に至らせることが出来、花の細部の形態観察と開花習性の観察が出来た。また根の採取を行い、染色体の観察を行った。これらにより、ニュージーランドのものは日本のものと大きく異なり、全ての地方型で二倍体であること、花柱の形態が日本のものと大きく異なること、などが判明し、2件の学会発表を行った。今年度実施予定のオーストラリアでの調査を行った。東海岸各地でコモウセンゴケ、同変種、および近縁種の採取が出来た。また、ストップオーバーで訪れた香港でも冬にも関わらず貴重な近縁種の採取に成功した。これらはニュージーランド産での経過と同様に慎重に栽培を行っているところである。 一方、種子休眠性に関して異なる特性を示すことがわかっている小杉、那谷、竜王、武豊の4集団、および予備的観察から武豊と同様3タイプの種子発芽特性を示すことがわかっている小鈴谷の計5集団から各々2〜26のトウカイコモウセンゴケおよびコモウセンゴケ無菌株を作成した。無菌株作成の際に行なった種子発芽実験から、モウセンゴケ、コモウセンゴケ、トウカイコモウセンゴケとも、4週間4℃の低温処理の有無で発芽率に差は見られなかった。またコモウセンゴケの発芽率が高いのに対して、モウセンゴケは1個体も発芽しなかった。モウセンゴケ同様、野外栽培で種子休眠性を示す小杉のトウカイコモウセンゴケ種子では発芽率は極めて低かった。これらの結果から、休眠打破に必要な条件は4℃4週間では不十分であることがあきらかとなり、小杉の集団はモウセンゴケの種子休眠特性を持つ可能性が示唆された。
|