研究概要 |
間隙性種の中で,特に産出頻度の高い20余種について,分子系統解析を行い,ミトコンドリアCOIおよび核18SDNAの塩基配列を明らかにし,分子系統樹の構築を試みた.この結果,間隙性貝形虫類は,多くの分類群の集合体であり,平行進化としての所産であることを示すことができた.また,交尾器の形態解析から,機械的隔離機構や形質置換などの現象を捉えることに成功した. 野外調査として,研究代表者にとっての近隣地域である伊豆半島沿岸をはじめ,三浦半島,房総半島,紀伊半島,沖縄本島,宮古島,石垣島,国外ではタイ南部において野外調査を行った.各地域において,多数の未記載種が見出され,現在新種として論文執筆中である. 本年度研究代表者である塚越およびその指導する学生,分担研究者が発表した論文件数は7件で,そのうち間隙性貝形虫類に関するものは5件である.また,国内外での学会等でも活発に発表を行い,同じく25件が行われ,内22件が間隙性貝形虫類に関する内容のものであった.特にブラジルで行われた第16回オストラコーダ(貝形虫)国際シンポジウムでは,生物多様性と進化の視点からの研究が高く評価された.また研究代表者はIRGO(国際オストラコーダ研究部会)の財務委員となった. また,指導した静岡大学創造科学技術大学院・大学院生であった東亮一は,"Molecular phylogeny and morphological evolution of interstitial cytheroid Ostracoda"と題した間隙性貝形虫類の進化に関する画期的論文を本年度末に提出し,博士号を取得した.間隙性貝形虫類に関する博士論文としてはわが国初であり,世界的にも初めてである可能性が高い. さらに,藤原ナチュラルヒストリー振興財団のウェブサイト上に,本研究の研究成果の一部が公表された. 以上のように,本年度は,本研究が大きく発展し,成果が形となって表れる年となった.
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