研究課題
本研究は農林生態系のアリ類群集の解明と農林生態系をモデルとする群集生態理論の検証を目的とし、東アジアのアリ群集について、資料収集、分析・評価、分類情報整備などを行った。これらの成果は次の通りにまとめられる:(1) ベトナムの農業生態系で調査地を設定し、定量的なサンプリングを実施した。その結果、約50種の生息が明らかとなった。圃場あたりの種多様性は作付形態によって異なり、一年生作物や除草・薬剤散布など撹乱の頻度が多いほど種数が減少する。特にサトウキビ畑では収穫後2ヶ月と7ヶ月の圃場で後者での種の増加が見られた。サトウキビは多年生作物で、アジアの広い範囲で年1回の収穫後に株だし栽培が行われている。そこに生息するアリ類は生物多様性の緯度傾斜や攪乱の問題を扱うのに適した事例として注目される。(2) 北関東から屋久島にいたる8つの地域の農林生態系の54サイト320のデータを除歪対応分析(DCA)により解析し、アリ群集の種構成が攪乱の程度により序列化されることが示された。されにこれらを二元クラスター分析で解析し、群集の種構成の類似性と種の出現パターンを示した。また、群集の指標種を抽出するためインディケーター値をk-means法により階層的に分析し、35種を特定した。包括的なデータによる解析はこれまで例がなく、アリ類のバイオインディケーターとしての利用が期待される。(3) 多様な生態系に比較的普遍的に分布し、種数が多く、難分類群であるシリアゲアリ属について、整理をすすめ、新種の記載やシノニムの整理など学名について分類学的な再検討を行った。またDNAバーコードによる同定について実効性を検討するため、ウンカ・ヨコバイ類を事例に研究を推進した。
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