本年度はペア型免疫系受容体のうち、CD99様分子を認識するPILR(Paired type 2 Ig-like receptor)と、E-cadherinを認識するKLRG1、CD160について、リガンド分子認識機構を相互作用解析と立体構造解析(X線結晶構造解析)により明らかにすることに取り組んだ。昨年度と同様に大腸菌を用いた発現と巻き戻しにより、ヒトおよびマウス由来のPILR群の、細胞外全長と免疫グロブリンフォールドVsetドメインのみの2種類を調製した。さらに、マウスPILRについて、リガンドCD99との結合実験から速い速度論的パラメータを有する弱い結合であるとがわかった(Tabata et al.JBC2008)。他方、ヒトの抑制型PILRαのVsetの結晶化については、野生型結晶から1.4A程度の高分解能データの収集に成功し、単波長異常分散(SAD)法による構造決定のため、ヨー素誘導体の結晶データを収集した。その結果、構造決定に成功した。現在、リガンドとの複合体の構造決定を目指している。他方、KLRG1とEカドヘリンは、PILRと同じく巻き戻しにより、結合実験とNMR解析に必要な組換え蛋白質を調製した。NMRを用いた相互作用解析からEカドヘリンのN末端領域が結合に重要であることがわかり、変異体解析により確認することに成功した。結合自体は速い速度論的パラメータを有する弱い結合であった。CD160については巻き戻しによるサンプル調製に成功し、現在リガンドの調製を進めている。
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