本年度はペア型免疫系受容体のうち、Killer cell lectin-like receptor G1 (KLRG1)とリガンドであるE-カドヘリン認識の分子レベルで解明するため、KLRG1およびE-カドヘリン組換え蛋白質の大量調製、表面プラズモン共鳴実験、核磁気共鳴(NMR)解析、分析用超遠心と多岐にわたる物理化学的手法を駆使して相互作用解析を行った。また、KLRG1の細胞レベルでのE-カドヘリン認識とその機能への影響を調べるために、KLRG1テトラマーを用いた結合実験、KLRG1発現レポーター細胞解析、さらにはKLRG1発現NK細胞を用いた細胞傷害活性実験を行った。相互作用解析からKLRG1がE-カドヘリンのN末端ドメイン1とドメイン2に解離定数7-12μM程度で結合することがわかった。NMRのHSQCスペクトル測定による結合実験では、E-カドヘリンのN末端領域に存在するアミノ酸のシグナルがKLRG1の結合により大きく変化することが観測された。このN末端領域はE-カドヘリン同士が結合し、細胞接着を形成する際に用いられる領域でもあった。次に、E-カドヘリン変異体を用いたSPR解析およびテトラマー結合実験を行ったところ、N末端変異体はKLRG1との相互作用が見られなくなるか、弱まることがわかった。更に、KLRGI発現NK細胞を用いた細胞傷害活性とレポーター細胞を用いたシグナル伝達能がE-カドヘリンのN末端領域の変異により低下あるいは消失することが分かった。
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