研究概要 |
トリパノソーマやマラリアはツエツエバエやハマダラカによって媒介される熱帯病とされてきたが、地球温暖化により広まる気配を見せている。しかし、これらに対する有効な治療薬が少なく、更に薬剤耐性の出現が問題となっている。我々は病原微生物の代謝系酵素に焦点を当て、酵素遺伝子をクローニングし、酵素を発現させる。更にその立体構造を明らかにして阻害剤を合成し、新しい治療薬として開発することが目標である。 (1)アミノペプチダーゼNに対する特異的阻害剤:病原微生物は高いアミノペプチダーゼN活性を持ち、ペプチド代謝によりアミノ酸へ分解し栄養摂取を行っている。今回、酵素作用の中間体に類似の化合物としてPL250を開発した。酵素と阻害剤との複合体のX線結晶構造解析により、詳細な活性部位へ結合状態を明らかにすることができた。アミノペプチダーゼNを強力に酵素阻害することにより兵糧攻めにすることによる治療薬の可能性を研究している。 (2)オリゴペプチダーゼB:酵素の結晶解析を行い、結晶パラメータ、格子定数a=b=123.9,c=248.0 Å, γ=120゜を持つ、単純格子の三方晶系(P hexagonal)に属する結晶系であることを明らかにした。更に院内感染菌のStenotrophomonas maltophiliaのジペプチジルアミノペプチダーゼIVを精製、結晶化して酵素のX線結晶解析を行った。本酵素とオリゴペプチダーゼBは類似の基質特異性とアミノ酸配列のホモロジーを持つことからオリゴペプチダーゼBの構造や機能を検討した。
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