1.分泌系において、小胞体上のマイクロドメインはCOPIIコートにより被われており、そのダイナミクスが新たに作られるタンパク質の細胞外輸送への律速となる。この形成に関して新たに提出されたM.Weissらによる、COPIIのランダムな動きによって小胞体膜上で偶然生じたドメイン内にカーゴ分子がトラップされて輸送が形成されるというモデルを1分子可視化の方法を用いて検討した結果、COPIIコート成分の小胞体膜上での滞在時間は、マイクロドメイン以外では極めて短く、このモデルには無理があることがわかった。この理由として、彼らが用いたタンパク質合成阻害自体がカーゴダイナミクスに影響を与えることを、光変換プローブを用いたモデル分子を用いた実験により見出した。ただ、この影響は細胞種により異なり、その生理的な意味については詳細な解析が必要である。2.siRNAライブラリを用いて見出したホスファチジルコリン合成に関与する因子群が、分泌系の様々なレベルでの顆粒輸送において複雑な制御を行っていることを見出し、さらにその制御には因子自体の局在変化と関連することを見出した。この原因は中間体の量的変化というよりは、濃度勾配の変化によるものであり、ターゲットの同定は進行中である。3.1分子可視化システムの改良により、2008年に発表したデータより一桁上の観測精度を得ることができるようになり、新たに得られた知見に基づいて、我々が発表した細胞骨格系によるカーゴダイナミクスの制御というモデルを再検討し、細胞質構造の内腔側でのカーゴ分子の成熟化における役割について新たなモデルの構築を行った。また、この過程で内腔~外界での観察にふさわしい蛍光タグを開発した。
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