細胞増殖因子受容体のエンドソームでの選別輸送の制御と受容体を介するシグナル伝達制御とは深く関わっているが、その詳細な分子機構は不明な点が多い。本研究では、選別輸送とシグナル伝達制御の分子機構の解析を行い、以下の結果を得た。 1. HGF刺激したHepG2細胞ではERKシグナル伝達経路が強く活性化される。選別輸送制御因子Hrsを過剰発現したHepG2細胞では、HGF受容体の分解が遅延するとともにERK経路の活性化が高レベルで持続する。そこでERK経路の強活性化を導く分子機構を解析した。アダプター蛋白質Gab1を結合できないHGF受容体を発現したHepG2細胞では、ERK経路の活性化が低く抑えられた。またGab1をノックダウンした細胞でも、ERK経路の活性化が抑制された。これらの結果は、Gab1がERKシグナル伝達経路の強活性化に重要であり、エンドソームでのHGF受容体の選別輸送がGab1からのシグナル伝達の制御に重要な役割を果していることを示唆している。 2. 増殖因子受容体の選別輸送の制御には、受容体のユビキチン化が重要であり、脱ユビキチン化酵素UBPYがその制御に関与している。したがってUBPYの活性制御機構を明らかにすることは、受容体の選別輸送とシグナル伝達の制御の理解にとって重要である。そこでUBPYの活性制御因子を明らかにするために、Yeast two-hybrid法を用いて結合蛋白質の探索を行った。その結果、結合蛋白質としてCHMP4Bを同定した。またUBPYはMITドメインを介してCHMP4Bと結合した。さらにCHMP4Bを過剰発現したHeLa細胞では、EGF刺激時のEGF受容体のユビキチン化レベルが上昇した。これらの結果は、CHMP4BはUBPYに結合してその活性を抑制することにより、受容体の選別輸送とシグナル伝達を制御していることを示唆している。
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