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本研究では、C型肝炎ウイルス(HCV)および病原性プリオンタンパク質(PrPSc)を病原体モデルとして用い、これらの感染・増幅メカニズムと脂質動態との関連性を明らかにすることを目的とする。本年度の研究では、HCVをモデル病原体として用いた一連の研究において、ある種のイノシトールリン脂質代謝酵素がHCV複製を制御すること、また本酵素の基質となるイノシトールリン脂質がHCV-Coreタンパク質と脂肪滴上で共局在を示すことを新たに見いだし、このイノシトールリン脂質が脂肪滴形成へと関与することによってHCV複製を制御していることを明らかにした。さらにHCV生活環に関わる宿主因子群のスクリーニングを拡大して行った結果、mTOR制御因子群がHCV増幅および産生過程に関わっていることも新たに見いだした。一方PrPScをモデル病原体として用いた一連の研究においては、今回新たに開発したPrPSc細胞間伝播アッセイ系を用いて、複数のイノシトールリン脂質代謝酵素がPrPScの細胞間伝播に関与していることを見いだしたほか、細胞内の膜輸送に関与する低分子量GTP結合タンパク質がPrPScの細胞間伝播に影響することを見いだした。これらの知見は病原体の細胞内増幅および細胞間伝播においてイノシトールリン脂質が重要な役割を担っていること、さらにイノシトールリン脂質代謝酵素群が病原体感染の拡大抑制を目的とした創薬標的となりうることを示している。
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