モデルタンパク質としてマルトース結合タンパク質を使用して、マルトース結合部位近傍のTyr210あるいはTyr242に4塩基コドンによりBODIPY558標識アミノ酸を導入しつつ、N末端にアンバーコドンによりBODIPYFL標識アミノ酸を導入した場合に、FRETとトリプトファンによる蛍光消光により、マルトースの結合に伴うタンパク質の構造変化を計測できることを明らかにした。この際、トリプトファンを置換することで、蛍光消光に直接関与するトリプトファン残基を同定して、蛍光基とトリプトファンの相互作用がタンパク質構造の蛍光分析に有用であることを確認した。 また、FRETのドナー・アクセプターの導入の影響を極力避けるために、小さなFRETアクセプターとしてNBD標識アミノ酸の使用を新たに検討した。マルトース結合タンパク質のN末端領域にローダミン誘導体の蛍光標識アミノ酸を導入しつつ、Tyr341にNBD標識アミノ酸を導入した場合、マルトースの結合に伴うタンパク質の構造変化によって、FRET効率が変化することを確認できた。今後は、種々の部位にNBD標識アミノ酸を導入することで、FRET効率を定量的に比較することを試みる。 さらに、蛍光標識されたリン酸化タンパク質を合成するために、終止コドンUAGを用いて非天然アミノ酸を効率良く導入できるアンバーサプレッサーtRNAの開発を行なった。そのために、緑色蛍光タンパク質GFPにBODIPY558標識アミノ酸を導入する系を利用して、アンバーサプレッサーtRNAの翻訳活性をリアルタイム検出可能な手法を新たに開発した。今後、この手法を用いて様々なtRNAをスクリーニングすることで、リン酸化チロシンを効率良く導入することのできるtRNAの取得を試みる。
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