研究概要 |
本研究では近年、新たに発見された古細菌型ロドプシンに対して系統的な赤外分光を行い、光がどのようにエネルギーや情報へと変換されるのか、そのメカニズムを明らかにすることを目指している。特に、我々が世界をリードしてきた既知の古細菌ロドプシン(ポンプのバクテリオロドプシン、ハロロドプシン、センサーのフォボロドプシンなど)の赤外分光との比較を徹底的に行い、ロドプシンが機能する際の構造変化について統一的な原理を見出すことを目指す。具体的な測定対象としては、真正細菌や真核生物に見出されたロドプシンを考えているが、本年度はProteorhodopsin (PR), Anabaena Sensory Rhodopsin (ASR)などに対して以下の成果を得た。 海洋性バクテリアには千種類ものPRが存在し、プロトンポンプとして光エネルギー変換を行うと考えられている。このようなさまざまなPRは環境に応じて吸収する光の波長を最適化しているはずだが、我々はレチナールから遠隔部位のアミノ酸変異が色を変えるというこれまでの常識に完全に反した現象を発見した。一方、光駆動ポンプとしてエネルギー変換を実現する古細菌型のロドプシンだけでなく、光情報変換を担うASRの光反応を低温赤外分光法により検討したところ、細胞質側に特異な水素結合構造を見出した。 一方、古細菌型ロドプシンの測定としてはバクテリオロドプシンの時間分解赤外分光やセンサリーロドプシンIおよびIIの低温赤外分光解析を発表することができた。それ以外の成果も含め、2008年に14編の原著論文を世に出すことができた。また、平成20年度には13件の招待講演を含む51件の学会発表を行った。
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