研究概要 |
膜蛋白質として、7回膜貫通蛋白質であるハロロドプシンと,古細菌フォボロドプシンのトランスデューサであるpHtrIIを主に取り上げた。これら試料は、大腸菌の量発現系により最小倍地を用いて13C,15N同位体標識をおこなった。蛋白質は重水素化した脂質膜に再構成し、機能があることを確かめた。これらを固体NMR構造解析の対象とした。室温では、水溶性領域など分子運動性の高い領域と膜貫通領域など運動性の低い領域を分離して測定することができた。水溶性領域の観測はINEPT法に基ずく方法もので、貫通領域はCP法に基ずく方法を用いた。水溶性領域については特に高い分解能でNMRシグナルを測定することができた。これを、主にJ結合を用いて多次元1H,13C,15N多重共鳴NMR法で、信号を分離して測定した。H-C二次元、H-CC二次元、HN-C二次元などにより多数の残基ない相関情報を得て、これによりほぼアミノ酸残基に信号を帰属することができた。もっとも解析が進んだのはpHTrIIであった。これにより、水溶性領域はαヘリックスを主に取っていることがわかった。これは、このトランスデューサによる長い距離にわたる信号伝達には必要な構造要素であることが考えられた。さらに残基間相関を得るためにH-H双極子結合を使う方法、N-Cの弱いJ結合を使う方法、部位特異的スピンラベル法(SDSL)を使う方法の検討を開始した。NOE法では分子鎖が強固な構造を取っていないため現在まで強い分子間相関を得られていない。N-C_J結合法では、脂質二重膜に結合している分子であるため緩和が早く弱いJ結合による相関が観測できていない。そこで重水素化法、SDSL法、アミノ酸選択的標識法を検討してこの問題に取り組んでいる。
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