昨年度までに、新規HP1結合因子を含む85種類以上のタンパク質を同定した。85種類のHP1結合蛋白質のうち21種類はKRAB domainをもつzinc finger蛋白質であったことから、HP1を基点としたKRAB-zinc finger蛋白質ネットワークの存在が示唆された。KRAB-ZNFタンパク質の1つZNF483について相互作用因子の網羅的な同定を試みたところ、HP1に結合するコリプレッサーであるTIF1βが効率よく検出されたが、一方で、ZNF483以外のKRAB-ZNFタンパク質およびHP1は同定されなかった。逆に、FLAGタグしたTIF1βを安定発現するヒト293細胞を樹立し、免疫沈降を行ったとごろ、HP1と結合しているものを含む約40種類のKRAB-ZNFタンパク質が同定された。また、HP1も効率よく共精製されていることがわかった。これらの結果より、HP1には多種類のKRAB-ZNFタンパク質が結合するが、KRAB-ZNFタンパク質問できは相互作用しないこと、そしてTIF1βに複数のKRAB-ZNFタンパク質が同時に結合するのではなく、それぞれのKRAB-ZNFタンパク質とTIF1βとが1対1で相互作用していることが示唆された。また、TIF1βは多くの種類のKRAB-ZNFタンパク質と相互作用していることがわかった。このことからHP1と多数のKRAB-ZNFタンパク質の相互作用は直接的ではなくHP1と結合するTIF1βを介して行われていることがわかった。HP1は、TIF1βのように多種類のタンパク質と結合することができるタンパク質と直接結合することにより、HP1自身の局在や機能に多様性を付加しているものと考えられた。 さらに、HP1の3つのサブタイプ特異的な結合因子を探索するために、HP1βとHP1γについて初年度HP1αと同様に様々な変異蛋白質を発現する細胞株を構築した。
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