昨年度までに、HP1α結合因子を約100の同定し、そのうち21種類がKRAB domainをもつzinc finger(KRAB-ZNF)タンパク質であった。当該年度は、HP1βとHP1γについても結合因子を同定したところ、HP1αと同様にそれぞれ100種類以上の結合タンパク質を見いだした。そのうち、50種類は全てのサブタイプに共通の因子であったが、残りの50種類については、それぞれの因子特異的あるいは、3種類のうち2種類に特異的に結合する因子であることが分かった。このサブタイプによる結合因子の違いがそれぞれのサブタイプの局在あるいは機能の違いに貢献していることが強く示唆された。興味深いことに、HP1βには、DNA複製に関与するポリメラーゼ複合体、ヒストンシャペロン、クロマチンリモデリング複合体が見いだされ、HP1αあるいはHP1γとの機能の違いが示唆された。また、KRAB-ZNFタンパク質は、その種類によって結合するサブタイプが異なることが明らかとなった。KRAB-ZNFタンパク質はTIF1βを介してHP1と結合することが知られている。当該年度の解析により、HP1とTIF1βとの結合にはHP1のサブタイプによる特異性がないこと、TIF1βとKRAB-ZNFタンパク質との結合にもKRAB-ZNFタンパク質の種類による特異性がないことが明らかとなった。これらのことから、それぞれの種類のKRAB-ZNFタンパク質はTIF1βと複合体形成することにより、結合するHP1のサブタイプへの特異性を獲得することが示唆された。これらの知見は、3種類のHP1が如何にそれぞれ異なる機能を獲得しているのかを解明する手がかりになると思われる。
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